人類にはなぜ右利きが多いのか [生活・宗教・マナー・教育・遺伝]

人々の手 右利き 人類

世界の約9割の人は、利き手が右だそうです。
世界の人口は約76億人。
その中で、国によっての差はありますが、世界的に見ると右利きと左利きの割合は9:1になっているのだそうです。
また、どの国でもほぼ同じ割合だということです。

ちなみに、アメリカやイタリアなどのヨーロッパ諸国は、日本よりも右利きの人が多いそうです。
また、性別では、女性よりも男性の方が、右利きの人が少し多いのだそうです。

私は普段、利き手が右であるか左であるかについて、深く考えることはほとんどありません。
しかし、世の中の道具や設備は、左利きの人よりも右利きの人にとって便利なように作られているものが多くあります。

例えば「はさみ」は、販売されている商品のほとんどが、右利き用になっています。
PC(パソコン)のマウスのボタンも右手で使いやすいように、人差し指で操作する左ボタンが頻繁に使うクリックを担当し、中指で操作する右ボタンがコンテキストメニューの表示などの右クリックとなっています。
街に出ると、駅の自動改札機は、切符やICカードを右手で使いやすいように設計されていますし、自動販売機のコイン投入口も右側にあります。

そこで今回は、なぜ右利きの人の方が左利きの人よりも多いのかについて、気になったので調べてみました。

利き手とは? 「利き手の定義」

右利きが多い理由に入る前に、利き手の定義について整理しておきます。

利き手とは、左右の手のうち、優先的に使用する手のことを言います。
人間は普段何かの動作する時に、「よし、今回は右手を使おう(または左手を使おう)」とわざわざ意識することはありません。
ですので、利き手は人が動作を行う際に、反射的に使う頻度が高い方の手になります。

利き手の判断

一般的には「箸、スプーン、ナイフなどを持って、食事の時に使う手」「ペンを持って、文字を書く時に使う手」「ボールやラケットなどを持って、スポーツをする時に使う手」に左右のどちらの手を使うかによって、利き手を判断します。

利き手を調査する方法には「エディンバラ利き手調査」という方法もあるそうです。

宗教・風習

カトリックでは、左利きは禁忌と考えられているそうです。

キリスト教では、左利きは悪魔の象徴とされ、キリスト教圏内で絵画に描かれている悪魔は、そのほとんどが左利きなのだとか。
「左利き = 悪魔」であり、聖書には「悪魔は左手に宿り、病気は左手からやってくる」と書かれています。

「左利き = 魔女」という考えもあり、魔女狩りの対象にもなっていたといいます。

ヒンズー教では、左手は「不浄の手」とされており、左手を使うことは避けられ、握手をしたり、物を渡したりすることは基本的に右手で行われます。
逆に排泄の処理などは左手が使われます。

イスラム教では、左よりも右を優先する思想があるために、イスラム教の信者の「ムスリム」の人たちは、右手を使うことが多くなるのだそうです。
例えば、食事や衣服の着脱、礼拝時の所作などの日常生活では右手(および右足)を使います。(左利きであっても右手を使います。)そして、ヒンズー教と同様に排泄後の処理には左手を使うので「不浄な手」とされているのです。
イスラム教圏内では刑罰として、窃盗犯の右手の指を切断するという残酷な刑が科された記録も残されています。

日本文化 マナー教育

日本では、箸を左手で持つことがマナー違反だという考え方があります。
日本の美しい文化では、箸は右手に持つのが作法であり、左手で持つことは、「本来であれば親がするべき子供の躾を放棄した結果」だと言われているそうです。
日本の食事作法、日本料理の配膳では、箸の向きや、食べやすい魚の盛り付け方なども、箸を右手で持つことを前提として行われます。

日本の幼稚園、小学校の受験でも、利き手が左の場合は評価が下がり、不利になる場合があるそうです。

遺伝的要因

利き手は遺伝するという研究があります。PCSK6やLRRTM1という遺伝子が、利き手に影響を与えているという研究です。ただし、この利き手の遺伝に関する研究は、まだまだ途中段階なので明確な回答がされているわけではありません。

遺伝するということは、我々の祖先は右利きだったということになります。
では、なぜ我々の祖先の利き手が右だったのかということが気になります。
これについては、関西福祉科学大学の八田武志先生が研究をされており、そのことについてテレビなどで情報を発信されています。

我々の先祖が右利きになった理由

我々の先祖が右利きになった原因は、人間が狩猟を始めたことによるものだそうです。
獲物を追い詰めるために、人々の間ではコミュニケーションツールとして言葉が使われるようになりました。
人間の脳には右脳と左脳がありますが、主に右半身を左脳が、左半身を右脳が動かしていると言われています。
左脳には言葉を話す時に使用する言語野という言語中枢のある領域があり、それが右利きの人が多い理由なのだそうです。
人がたくさんの言葉を操るようになるのにしたがって左脳の言語野が発達し、それが要因となって右手右足を使うのがどんどん上手になっていったようです。
その結果、上手に使える方の手足を使う頻度が増え、それに伴って右利きの人が増えていったのです。

「利き手が言語能力と関連している」とする説は、右利きが多い理由として、現在最も有力だとされています。

人間が言語を操るようになり、右利きが増えていったのは、実に今から6万年以上前のことだということです。

右脳と左脳

計算をしたり、論理的に物事を考えたり、また、スポーツなどの体を動かすことも左脳が担当していると考えられています。対する右脳は、物事を比較的大雑把にとらえたり、クリエイティブな発想やひらめきなどを担当していると考えられています。
左利きの芸術家が歴史的に功績を残している理由も、このあたりにありそうです。

参考資料

左利きに天才が多いのは理由がある!?科学的根拠と共に紹介
左利きと天才の関係 | 左利きの真実と最新研究

まとめ

今回は、世界にはなぜ右利きの人の方が圧倒的に多いのかについて調べました。
人類が右利きになったのは、ごく最近のことではなく、すでに狩猟を生活の糧としていた時代から始まっていたのでした。

そして、宗教や風習により、左利きは好ましくないという考え方から、より一層と右利きの人の割合が増えていったものと思われます。

右利きの人が多いことにより、世の中の道具や仕組みなどが右利きの人にとって便利なように作られたことも、右利きの人が全人類の9割に達するに至った要因とも考えられます。

現在の日本では、左利きの人を差別するような考え方は一般的ではありません。ですので、左利きの人がより良く暮らせるような社会づくりが必要になってきているのかもしれません。

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